コラム

調停と訴訟ではどちらを重視すべきか

離婚するためには、訴訟を提起する前に、必ず調停手続を経る必要があります(これを調停前置主義といいます)。したがって、調停がうまくいかないときに訴訟になるため、基本的にはどちらの手続を重視すべきかという関係には立ちません。

しかし、調停がうまく運ばないことにいらだって、あとは訴訟で解決すればいいと考えられる方も多いかと思います。または、争いが激しい案件では合意を得ることは難しいので、裁判官が判断する訴訟に期待して調停に重きを置かない方もおられます。

たしかに、訴訟でなければ解決できない事案の存在は否定しません。また、訴訟を利用した方がいい案件もあります。

しかし、以下の理由から、できる限り、調停で解決する方向で進められた方がよいのではと考えております。

1 離婚の判決は予測が難しい

明らかに離婚原因が認められる案件であればあまり問題はないのですが、そのような案件はそれ程多くはありません。また、離婚についてはもともと条文数が少ないうえ、その判断も一切の事情を考慮して判断するとされております。そのため、個々の裁判官の裁量に左右されることが多いので、正確に結果を判断することが難しいと言えます。

この点からも、過度に訴訟に期待するよりも、早期に当事者の合意に基づいて処理する方がよいと考えられます。

2 訴訟で負けると当分離婚できなくなる

人事訴訟法25条において訴訟時に存在していた全事情を主張することが要求されております。したがって、訴訟で離婚が認められないと、その時点では離婚原因はなかったことになります。そのため敗訴から2年から3年程度経ってから、別居期間がある程度経ったことを新たな事情として訴訟を提起する必要があります。

この点からも、訴訟で敗訴した場合、かえって離婚ができないという状況となり得るため、慎重に判断して訴訟を提起する必要があると言えます。

3 訴訟は当事者の負担が大きい

訴訟には、一般的には弁護士が必要であり、その費用は調停よりも高く設定されております。そのうえ、訴訟では婚姻関係が破綻したことを立証しなければならず、そのためには相手方の行為によって破綻に追いやられたことを主張しなければならず、結果、お互いの過去の悪い点をあげつらうことになり精神的にも追い詰められることにもなります。

さらに、期間的にも、訴訟で争われて、判決まで行きますと2~3年かかることは、珍しいことではありません。

このように訴訟は調停よりも、より一層当事者の負担が大きくなると言えます。

4 調停を重視することは訴訟になっても必要なことである

離婚できるか微妙な事案であっても、訴訟で和解することを期待して訴訟することもよく見かけます。しかし、調停で十分に相手方の言い分を聞いて、調整に努力した上でないと不満が蓄積したままのため、和解離婚どころか訴訟でとことん争われて敗訴になることもありえます。それを避けるためにも調停ではある程度時間をかけて相手方の気持ちをほぐしていく必要があると言えます。

5 和解による金額が調停の方が大きい

調停では早期解決のために、裁判所の実務の運用による金額に、上乗せした金額を提示することはよく見られることです。これは調停が合意に基づくものであることから、相手方に早期に合意してもらうための承諾料という点もあるかと思います。

しかし、訴訟になりますと、裁判官が判断するわけですから、このような承諾料ともいうべき金額を支払う必要はないということになります。

この点からも、たとえ調停の相手方になった場合であっても、調停でできる限り多くの収穫を得て早期に解決した方が得ということになります。

6 訴訟まで進めると当事者にしこりを残す

訴訟で解決しても、長い間争ったため、子との面会交流の実施や、養育費の支払を守るかについて、少なからず影響を与えかねないと思います。この点、調停は、当事者の合意によって決められますので、より円満解決と言うことになり、支払等もより守られる可能性は大きいといえます。

以上から、できる限り調停で解決する方向で進めていった方がよいのではと考えます。

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