コラム
調停手続に弁護士(代理人)は必要か
調停手続には、公正な第三者である調停委員がいるため公正妥当な結果に導いてもらえるので、弁護士は必要でないのではとのご質問をいただくことがあります。しかし、以下の理由から、できれば弁護士をつけた方がよいと考えております。
1 調停の手続的な制約
調停手続自体が、裁判所が判断する手続ではなく、当事者を合意させることによって解決する手続であるため、合意形成のために、当事者にはある程度妥協してもらうことが必要となります。その際、主張が強い当事者の意見が反映されやすかったり、説得に応じやすい当事者を説得するため、必ずしも本来の権利が実現されるわけではありません。
弁護士をつけることで、より当事者の権利を実現することが可能となります。
2 公正な第三者ゆえの制約
調停委員が「公正な」第三者であるために、当事者の一方が間違ったことを言ったとしても、調停委員が間違いを指摘して修正を図ることには、逆に限界があります。調停委員が当事者の間違いを指摘すれば、相手方に加担しすぎであると非難されたり、それに不満を持たれてかえって調停が不成立になりかねません。
そのような場合、弁護士が当事者の間違いを指摘することにより、公正妥当な結論に導くことが可能となります。
3 弁護士がつかない事案は不成立になりやすい
相談される方で、調停は弁護士をつけず不成立になったので、訴訟をして欲しいと言われる方も多いです。内容的には調停で解決した方がいい事案で、かつ弁護士がついていれば成立したと思われる事案が多々あります。
これはどのような理由によるのでしょうか。
当事者の主張は、時として自分の利益ばかりを主張しがちであり、落としどころを考えないことが多いです。そのため、調整が難しく、調停委員も早い段階で解決は困難であると判断することが多いからと言えます。
弁護士は、これ以上の要求をすれば調整が困難となり調停が不成立となることを経験的にわかっており、調整可能な提案や当事者を説得して解決への道筋を提示することができます。
4 調停委員に協力し補完する役割
難しい案件を調停段階で成立させることは、調停委員の経験等に頼るだけでは難しいといえます。調停委員と弁護士が協力し合って、はじめて難しい案件を乗り切ることが可能となります。難しい案件を訴訟ではなく調停段階で終わらせるには、弁護士をつけることは必要なものと考えます。
このように弁護士がつくということは、調停委員に協力し補完することによって、解決への道筋を示す役割もあります。
5 離婚に対する本気度を示すことができる
弁護士をつけることは費用のかかることですので、離婚について不退転の決意のいることと思います。離婚の相手方もその気持ちを察して、訴訟等の面倒な手続に引き込まれないうちに早期に解決した方がよいとの判断になりやすいということがいえます。
6 弁護士に依頼する時期について
依頼者の方は、調停をまずは当事者でやってみて、うまくいかなくなったら途中で弁護士をつければよいと考えがちです。
しかし、次の理由からも当初から依頼した方がはるかによいと言えます。どのような手続を選択するかを含めて、解決までの道筋をどう設定するかは弁護士の腕が最も問われるところです。当事者が出してはいけない証拠を安易に提出したり、安易に妥協したりしていた場合、それを覆すことは当初から依頼された場合に比べてはるかに難しいからです。
7 調停で決められたことを守らせる役割
たとえ調停が成立しても、弁護士がついていない案件では、調停で決められたことを守らない当事者が多く見られます。弁護士がついていれば、もとより実現可能性や約束を守らない場合をも考慮して決めていきますし、当事者としても調停できめたことを守らなければ弁護士から強制執行等をされることをおそれて、よほどのことがない限り、決められたことを守るようになります。
以上の理由から、少なくとも東京家庭裁判所にあっては、弁護士がつくことが大半であると思います。
当事務所は、調停は大切な手続であり、できれば調停で解決することが望ましいと考えております。調停手続を無駄にすることなく、その調停を成功させるためには、弁護士をつけることが最も有効な手段と考えます。